オリジナル解説 / 神経眼科
眼筋型重症筋無力症 —変動する眼瞼下垂と複視を見抜く
なぜ眼科で重要か
重症筋無力症(myasthenia gravis; MG)は、神経筋接合部のアセチルコリン受容体などに対する自己抗体により、易疲労性の筋力低下を来す疾患である。半数以上が眼症状で発症し、初診が眼科になることが多い。どの脳神経麻痺のパターンにも当てはまらない眼球運動障害を見たら、必ず候補に挙げたい。
疑うべき所見
- 眼瞼下垂の変動:夕方に悪化、疲れると悪化、日によって左右が入れ替わる。
- 複視の変動:時間帯・疲労で程度が変わる。単一の脳神経では説明できない眼球運動障害。
- 瞳孔は正常(MG は瞳孔を侵さない)。これは動眼神経麻痺との重要な鑑別点である。
- Cogan の lid twitch:下方視から正面視に戻したとき、上眼瞼が一瞬跳ね上がる。
- 上方視の持続で下垂が増強(易疲労性)。
ベッドサイドの検査
- アイスパックテスト:閉瞼した上眼瞼を約2分間冷却し、下垂が 2 mm 以上改善すれば陽性。簡便で外来で行いやすい。
- 休息試験:数分の閉瞼安静で改善するか。
- 抗コリンエステラーゼ薬による誘発試験(施設により実施可否が異なる。循環器系の副作用に備える)。
確定に向けた検査
- 抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体:陽性なら診断的価値が高いが、眼筋型では陰性のことが少なくない。
- 抗MuSK抗体:眼筋型では陽性率が低い。
- 反復刺激試験(waning)、単線維筋電図:神経内科と連携する。
- 胸部CT:胸腺腫の検索は必須。
- 甲状腺機能:甲状腺疾患の合併があり、甲状腺眼症との鑑別・併存も問題になる。
治療の枠組み(神経内科との協働)
- 対症的治療:コリンエステラーゼ阻害薬(ピリドスチグミン)。眼症状には効果が限定的なことがある。
- 免疫治療:副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬。全身型への移行を抑える目的でも用いられる。
- 胸腺腫があれば胸腺摘除。
- 眼科的対応:複視に対するプリズム、遮蔽。眼瞼下垂の手術は、症状が安定してから慎重に適応を判断する(変動する病態では術後のずれが生じやすい)。
見落としと落とし穴
- 全身型への移行:眼筋型のうち一定割合が発症後 2 年以内に全身型へ移行する。嚥下・構音・呼吸の症状が出た場合は緊急性が高いことを患者に伝え、神経内科の窓口を確保しておく。
- 薬剤による増悪:一部の抗菌薬(アミノグリコシド、キノロン、マクロライドなど)、筋弛緩薬、βブロッカーなどが症状を悪化させうる。緑内障点眼のβ遮断薬も注意対象になる。
- 加齢性眼瞼下垂と決めつけない:「夕方に悪くなる」「日によって違う」という一言を聞き逃さない。
関連リンク
- 下がったまぶたを冷やして調べる――眼筋型重症筋無力症の「アイスパックテスト」(自由が丘 清澤眼科)
- 「重症筋無力症」における眼瞼下垂症の治療について(高田眼科・浜松)
- 小児の重症筋無力症(オンライン眼科 Dr.K)
- 眼球運動と斜視 筋肉(外眼筋)の作用方向と解剖の基礎(めだまにあ)
主な参考:日本神経学会「重症筋無力症診療ガイドライン」/EyeWiki "Ocular Myasthenia Gravis"/アイスパックテストの診断精度に関する報告。治療は神経内科と連携し、薬剤の適応は添付文書に従うこと。
この記事は AI(手動(Claude+収集記事))が作成した解説です。 正確性を保証するものではありません。診療上の判断は必ず一次情報・成書をご確認ください。 (2026-07-23 作成)