オリジナル解説 / 神経眼科
複視へのアプローチ —単眼か両眼か、どの神経か
まず単眼複視か両眼複視かを分ける
複視の診療は、片眼を隠して消えるかを確かめるところから始まる。
- 単眼複視(片眼を隠しても、その眼だけで見ると二重に見える):眼の光学的な問題であり、神経疾患ではない。白内障(特に核硬化・後嚢下混濁)、乱視・不正乱視、円錐角膜、涙液の不安定、後発白内障、眼内レンズの偏位などが原因。
- 両眼複視(片眼を隠すと消える):両眼の視軸のずれ。神経・筋・眼窩・接合部のいずれかの問題であり、以下の鑑別に進む。
両眼複視の鑑別
動眼神経麻痺(第III脳神経)
眼球は外下方を向き、上眼瞼下垂を伴う。最重要は瞳孔の評価である。
- 瞳孔散大を伴う動眼神経麻痺は、後交通動脈瘤などの圧迫性病変を強く疑う緊急事態であり、直ちに頭部の血管を含む画像評価(MRA/CTA)へ進む。突然の頭痛を伴えば動脈瘤破裂の切迫を考える。
- 瞳孔が正常な、痛みを伴う不全麻痺は虚血性(糖尿病・高血圧)のことが多く、多くは数か月で改善する。ただし高齢でも画像評価を省略しない方針が安全側で、経過が非典型なら再評価する。
滑車神経麻痺(第IV脳神経)
上斜筋の麻痺により垂直・回旋複視を生じ、患側への頭部傾斜で複視が増悪する(Bielschowsky 頭部傾斜試験)。代償性の頭位(健側への傾き)が古い写真から確認できれば先天性の可能性が高い。後天性では頭部外傷が代表的。
外転神経麻痺(第VI脳神経)
外転制限による水平複視(遠見で悪化)。局在診断としての価値は低い(false localizing sign)点が重要で、頭蓋内圧亢進でも生じる。両側性、乳頭浮腫の合併、頭痛があれば頭蓋内圧亢進を疑う。
神経麻痺以外
- 甲状腺眼症:外眼筋の腫大による制限性斜視。上方視・外転の制限が典型で、複視の原因として頻度が高い。
- 眼窩底骨折:外傷後、下直筋の絞扼で上方視制限。
- 重症筋無力症:日内変動・易疲労性、眼瞼下垂の変動。アイスパックテスト、抗AChR抗体、反復刺激試験で評価する。「どの神経にも当てはまらないパターン」なら必ず候補に挙げる。
- 核間性眼筋麻痺(INO):内側縦束(MLF)の障害。片眼の内転制限と対側眼の外転時眼振。若年なら多発性硬化症、高齢なら脳幹梗塞。
- 開散麻痺・急性後天性内斜視:近年はデジタル機器使用との関連が議論されている。
診察の進め方
- 発症様式(突然か緩徐か)、変動の有無、頭痛・外傷・全身疾患(糖尿病・高血圧・甲状腺疾患)の聴取。
- 眼位・眼球運動(9方向)、Hess 赤緑試験、大型弱視鏡、回旋の評価。
- 眼瞼(下垂・変動)と瞳孔。
- 眼窩・眼球突出の有無。
- 画像:瞳孔散大を伴う III 神経麻痺、複数脳神経障害、乳頭浮腫、若年例、進行性の症例は速やかに撮る。
治療とフォロー
原因治療が原則。複視そのものに対しては、プリズム、遮蔽(片眼遮閉・部分遮蔽)、経過を見て斜視手術という順で考える。虚血性の単独脳神経麻痺は数か月で自然回復することが多いため、回復が止まって斜視角が安定してから手術を検討する。回復しない場合、悪化する場合、他の神経症状が加わる場合は、診断を疑い直す。
関連リンク
- 二重に見える(複視)(新小岩眼科 ブログ)
- 下がったまぶたを冷やして調べる――眼筋型重症筋無力症の「アイスパックテスト」(自由が丘 清澤眼科)
- 水平眼球運動障害について(眼科医ぐちょぽいのオンライン勉強会)
- 眼球運動と斜視 筋肉(外眼筋)の作用方向と解剖の基礎(めだまにあ)
- プリズム眼鏡の処方と複視治療:視能訓練士が解説(おおるり眼科クリニック)
主な参考:日本神経眼科学会の関連指針/EyeWiki "Third Nerve Palsy"・"Fourth Nerve Palsy"・"Sixth Nerve Palsy"/成書『神経眼科学を学ぶ人のために』。画像検査の適応は施設の方針と患者背景により異なる。
この記事は AI(手動(Claude+収集記事))が作成した解説です。 正確性を保証するものではありません。診療上の判断は必ず一次情報・成書をご確認ください。 (2026-07-23 作成)