オリジナル解説 / 白内障

白内障術後の合併症 —眼内炎・後発白内障・嚢胞様黄斑浮腫

概要

白内障手術は成功率の高い手術だが、術後合併症の初期対応は視力予後を左右する。ここでは頻度と重大性の観点から、術後眼内炎後発白内障嚢胞様黄斑浮腫(CME)、および鑑別に迷いやすい TASS を整理する。

術後眼内炎

最も重篤な合併症で、頻度は概ね 0.05% 前後(報告により 0.02〜0.1% 程度)とされる。多くは術後数日〜1週間以内に発症し、起炎菌は表皮ブドウ球菌などのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が最多、腸球菌・連鎖球菌・グラム陰性桿菌では急速かつ重篤な経過をとる。

  • 症状・所見:術後の視力低下・眼痛・充血の増悪、前房内フィブリン、前房蓄膿、硝子体混濁。「術後いったん見えていたのに急に見えなくなった」は危険信号である。
  • 対応:疑ったら直ちに硝子体・前房の検体採取と抗菌薬硝子体内注射(バンコマイシン+セフタジジムの併用が代表的)。重症例・視力が光覚弁レベルの例では早期の硝子体手術を検討する(EVS の知見)。
  • 予防術前のポビドンヨードによる結膜嚢消毒が最も確立したエビデンス。ESCRS の多施設研究では前房内セフロキシム投与が眼内炎発生を有意に減らしたと報告され、国内でも前房内・灌流液内への抗菌薬使用が広く行われている(国内の製剤事情・適応外使用の扱いは施設方針に従う)。

TASS(toxic anterior segment syndrome)は無菌性の前眼部炎症で、術後 12〜24 時間という早い発症、びまん性の角膜浮腫(limbus to limbus)、疼痛が比較的軽いことが眼内炎との鑑別点となる。原因は器具の洗浄不良や薬剤・防腐剤で、治療はステロイド強化。判断に迷う場合は眼内炎として扱うのが安全側である。

後発白内障(PCO)

残存する水晶体上皮細胞の増殖・化生により後嚢が混濁するもので、術後年余を経て「また白内障になった」と訴えられる。線維性混濁とElschnig 真珠様の増殖があり、液状後発白内障(capsular bag distension syndrome)のように嚢内に液体が貯留して屈折が近視化する病型もある。

治療は Nd:YAG レーザー後嚢切開。視機能低下が明らかになってから行い、切開は必要十分な大きさに留める。合併症としてIOL のピット(照射痕)、一過性眼圧上昇、嚢胞様黄斑浮腫、網膜剥離リスクの上昇があり、特に強度近視眼では慎重に適応を判断する。IOL 交換を要する状況(度数ずれ・グレア)が将来的に想定される場合、後嚢切開を先に行うと交換が難しくなる点も念頭に置く。

偽水晶体嚢胞様黄斑浮腫(Irvine–Gass 症候群)

術後4〜8週をピークに、中心視力の低下・変視で気づかれる。OCT で中心窩の嚢胞様腔と網膜厚増加、蛍光眼底造影では花弁状の過蛍光を示す。糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、ぶどう膜炎、術中合併症(後嚢破損・硝子体脱出)がリスクである。

治療はNSAID 点眼を中心にステロイド点眼を併用し、遷延例では Tenon 嚢下・硝子体内ステロイド投与や炭酸脱水酵素阻害薬内服を検討する。多くは可逆性だが、遷延すると視力回復が不完全になりうる。

その他

  • 屈折誤差:眼軸長測定誤差、術後の実効レンズ位置のずれ。屈折矯正手術既往眼では専用計算式を用いる。
  • IOL 偏位・落下:チン小帯脆弱例、外傷、落屑症候群。時間をおいて発症することがある。
  • 一過性眼圧上昇:粘弾性物質の残存が典型で、術翌日の眼圧確認が重要。
  • 角膜内皮障害・水疱性角膜症:内皮細胞密度が低い症例・超音波時間が長い症例で生じうる。

関連リンク


主な参考:ESCRS Endophthalmitis Study(J Cataract Refract Surg 2007, 前房内セフロキシム)/Endophthalmitis Vitrectomy Study(EVS)/日本眼科学会の術後眼内炎に関する指針/EyeWiki "Postoperative Endophthalmitis"・"Pseudophakic Cystoid Macular Edema"。薬剤の投与量・適応は添付文書と施設の方針に従うこと。

この記事は AI(手動(Claude+収集記事))が作成した解説です。 正確性を保証するものではありません。診療上の判断は必ず一次情報・成書をご確認ください。 (2026-07-23 作成)