白内障手術の術中合併症 —後嚢破損を中心に
概要
白内障手術は安全性の高い手術だが、術中・術後の合併症を理解し、リスク症例を術前に見極めて備えることが安全な手術の鍵となる。本稿では最も代表的な術中合併症である後嚢破損(PCR)を中心に、対処と主な術後合併症を整理する。
後嚢破損(PCR)
後嚢破損(posterior capsule rupture; PCR)は、術中に水晶体後嚢が破れ、硝子体腔と前房が交通する代表的な術中合併症である。大規模レジストリでのおおよその発生率は 1% 前後(術者の経験で大きく変動)。後極白内障は後嚢が脆弱で特異的に高リスクとされる。
主なリスク因子:術者の経験不足、成熟・白色・硬い核、後極白内障、チン小帯脆弱、落屑症候群(PEX)、小瞳孔、不良な赤色反射、高度近視、糖尿病、硝子体手術・硝子体内注射の既往など。
PCR 発生時の対処
- 前房を保つ:分散型の粘弾性物質(OVD)で破損部をタンポナーデし、灌流を下げて核片や硝子体を前房側に保持する。急な灌流の出し入れを避ける。
- 硝子体脱出があれば前部硝子体切除:トリアムシノロンで硝子体を可視化すると切除範囲を確認しやすい。
- 核片落下:硝子体腔へ落下した大きな核片を前房から無理に釣り上げず、硝子体網膜専門医による経毛様体扁平部硝子体切除(PPV)へ紹介する。落下防止に IOL scaffold 法(3 ピース IOL を「人工後嚢」として隔壁化する手技)も用いられる。
- IOL 固定:前嚢が十分残れば毛様溝(sulcus)留置や光学部前方捕獲(optic capture)。支持が乏しければ強膜内固定・毛様溝縫着・虹彩縫着・前房レンズを選択する。
その他の術中合併症
- チン小帯断裂:囊拡張リング(CTR)や囊フックで支持を補う。PEX は術中・術後 IOL 脱臼の高リスク。
- 駆逐性(脈絡膜上)出血:まれ(約 0.03〜0.1%)だが重篤。ただちに創を閉じ眼圧を上げて止血する。
- 虹彩損傷・IFIS(α1 遮断薬関連の術中虹彩緊張低下)、Descemet 膜剥離(広範例は空気・ガスで復位)なども起こりうる。
主な術後合併症
- 術後感染性眼内炎:発生率は概ね 0.1% 前後。原因菌は表皮ブドウ球菌などが多い。手術終了時の前房内セフロキシム 1mg 注入で発生が大幅に減少する(ESCRS 試験でおよそ 0.35%→0.06%)。急性発症例は硝子体内抗菌薬投与を行い、重症例では硝子体切除を検討する。
- 囊胞様黄斑浮腫(Irvine-Gass):術後 4〜12 週(ピーク約 6 週)に生じる視力低下の代表的原因。第一選択は局所 NSAID+ステロイド。
- 後発白内障(PCO):術後最多の遅発性合併症で、Nd:YAG レーザー後嚢切開で治療する。鋭角エッジの疎水性アクリル IOL は発生率が低い。
- 角膜浮腫・水疱性角膜症:術中の角膜内皮障害による。高度例は角膜移植(DSAEK/DMEK)を要する。
予防・リスク低減
術前にリスク因子(成熟・後極白内障、PEX、チン小帯脆弱、小瞳孔、高度近視、α1 遮断薬使用など)を同定し、手術計画・器具準備・術者選定に反映する。小瞳孔には瞳孔拡張デバイス、チン小帯脆弱には CTR・囊フックを準備する。感染予防には術前ポビドンヨード消毒に加え前房内抗菌薬が有効で、ハイリスク眼では周術期の NSAID/ステロイドで CME を予防する。
まとめ
後嚢破損は白内障手術の代表的な術中合併症で、前房の維持・前部硝子体切除・適切な IOL 固定が対処の柱となる。眼内炎(前房内セフロキシムで予防)・CME・後発白内障などの術後合併症も理解し、リスク症例を術前に見極めて備えることが安全な手術につながる。
主な参考:EyeWiki "Posterior Capsular Rent" ほか/ESCRS 前房内セフロキシム多施設試験(JCRS 2007)/Endophthalmitis Vitrectomy Study(1995)/RCOphth・EUREQUO レジストリ報告/IOL scaffold(Agarwal)。発生率や手技の詳細は原著・成書で確認されたい。
この記事は AI(手動(Claude+Web調査))が作成した解説です。 正確性を保証するものではありません。診療上の判断は必ず一次情報・成書をご確認ください。 (2026-07-16 作成)