オリジナル解説 / 白内障

難症例の白内障手術 —小瞳孔・チン小帯脆弱・成熟白内障

概要

白内障手術は定型化された手術だが、術前に難症例と分かっていれば準備で乗り切れる一方、想定外に遭遇すると合併症率が跳ね上がる。ここでは頻度の高い三つの難条件——小瞳孔、チン小帯(Zinn小帯)脆弱、成熟白内障——について、術前の見抜き方と基本戦略を整理する。

小瞳孔・術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)

散瞳不良の背景には、糖尿病、長期の緑内障点眼(特にピロカルピンなどの縮瞳薬)、落屑症候群、ぶどう膜炎による虹彩後癒着、レーザー虹彩切開後、高齢がある。

IFIS(intraoperative floppy iris syndrome)は、①虹彩のうねり(billowing)、②創口への虹彩脱出、③術中の進行性縮瞳、を特徴とする。α1遮断薬(タムスロシンなど、前立腺肥大症治療薬)の使用歴が代表的リスクで、内服を中止しても虹彩の緊張低下は残りうるため「休薬したから安心」とはならない。問診で内服歴を必ず確認する。

対策は、散瞳薬の追加(フェニレフリン・非ステロイド性抗炎症薬の術前点眼)、灌流圧・流量を下げた低灌流設定、粘弾性物質による虹彩の押さえ込み、そして虹彩リトラクター(フック)や瞳孔拡張リングの使用である。器具を使う判断は早いほうが安全側に働く。

チン小帯脆弱・水晶体亜脱臼

正常なチン小帯 脆弱側で水晶体が偏位
図2. チン小帯脆弱(模式図)。断裂側と反対方向へ水晶体が偏位し、赤色反射の不均一や虹彩振盪として現れる。

背景として落屑症候群が最多で、外傷、Marfan症候群・ホモシスチン尿症などの結合組織疾患、硝子体手術後、強度近視、過熟白内障がある。術前所見は虹彩振盪(iridodonesis)・水晶体振盪、前房深度の左右差・不均一、水晶体偏位、散瞳下での赤道部露出。散瞳下細隙灯での観察が要となる。

術中の基本方針は「嚢を支える」こと。嚢拡張リング(CTR)を早期に挿入して嚢の円形を保ち、脆弱範囲が広ければ縫着型リングを検討する。CCC はやや小さめに確実に作り、ハイドロダイセクション・回転操作は愛護的に、灌流圧は低めに保つ。嚢の支持が得られない場合は、IOL の毛様溝固定・強膜内固定・縫着へ切り替える。

成熟白内障・膨隆白内障

白色成熟白内障では赤色反射が得られず CCC の視認性が悪いトリパンブルーによる前嚢染色が有効である。膨隆白内障(intumescent cataract)では嚢内圧が高く、切開の瞬間に前嚢が赤道方向へ裂けるアルゼンチン国旗サイン(Argentinian flag sign)が起こりうる。粘弾性物質で前房を保ち、穿刺による減圧を先行させ、小さめの CCC から段階的に広げる。

過熟・成熟例ではチン小帯も脆弱なことが多く、核が硬いため超音波時間が延びて角膜内皮障害を来しやすい。分散型粘弾性物質による内皮保護、核分割手技の選択、必要なら嚢外摘出への切り替えを準備しておく。

後嚢破損に至ったとき

後嚢破損(PCR)を認めたら、まず灌流を止めて前房を粘弾性物質で保持し、器具を抜く前に前房を安定させる。硝子体脱出があれば前部硝子体切除を行い、瞳孔が丸く整うことを確認する。IOL は、前嚢が残っていれば毛様溝固定(+光学部の前嚢捕獲)、支持が乏しければ強膜内固定などを選択する。落下核が疑われる場合は無理に追わず、硝子体手術医へつなぐ判断が予後を守る。

関連リンク


主な参考:Chang DF ら IFIS 関連報告(J Cataract Refract Surg)/落屑症候群とチン小帯脆弱に関する総説/嚢拡張リング(CTR)の適応に関する成書『白内障手術の基本と実際』/EyeWiki "Intraoperative Floppy Iris Syndrome"・"Posterior Capsular Rupture"。器具・薬剤の使用は添付文書と各施設の方針に従うこと。

この記事は AI(手動(Claude+収集記事))が作成した解説です。 正確性を保証するものではありません。診療上の判断は必ず一次情報・成書をご確認ください。 (2026-07-23 作成)