角膜内皮障害と水疱性角膜症 —Fuchsジストロフィから内皮移植まで

角膜内皮という「再生しない層」

角膜内皮細胞はポンプ機能とバリア機能により角膜実質の含水量を一定に保ち、透明性を維持する。ヒトでは基本的に増殖しないため、失われた細胞は周囲の細胞が拡大・移動して穴を埋める。その結果、細胞密度の低下・大小不同(polymegathism)・六角形細胞比率の低下(pleomorphism)が進む。

  • 正常値の目安:成人でおよそ 2,300〜3,000 cells/mm² 程度(加齢とともに減少)。
  • 代償が破綻する水準:概ね 500〜1,000 cells/mm² を下回ると角膜浮腫が顕在化しうる。
  • 評価:スペキュラーマイクロスコープで密度・変動係数(CV)・六角形細胞率を見る。数値だけでなく形の乱れが予備能の指標になる。

内皮が減る主な原因

  • 加齢
  • 手術侵襲:白内障手術(超音波時間、前房内操作)、硝子体手術、緑内障手術(特に前房内チューブ)
  • レーザー虹彩切開術後:かつて閉塞隅角に多用された結果としての水疱性角膜症
  • 外傷、慢性の炎症、ヘルペス・CMV 角膜内皮炎
  • Fuchs 角膜内皮ジストロフィ、後部多形性角膜ジストロフィ(PPCD)などの遺伝性疾患
  • 虹彩角膜内皮(ICE)症候群

Fuchs 角膜内皮ジストロフィ

デスメ膜の滴状変化(guttata、滴状角膜)を特徴とし、中高年女性にやや多く、両眼性・緩徐進行。

  • 症状朝方に霧視が強く、日中に軽快する(睡眠中の閉瞼で蒸発が止まり角膜がむくむため)。進行すると終日の霧視、上皮浮腫による疼痛。
  • 所見:スペキュラーで guttata による黒い抜け像、進行例では細胞が読み取れない。前眼部 OCT・パキメトリーで角膜厚の増加を確認する。
  • 白内障手術との関係Fuchs があると術後に非代償化するリスクがある。術前に内皮を評価し、分散型粘弾性物質・低灌流・愛護的な核処理を計画する。進行例では白内障手術と内皮移植の同時(あるいは段階的)手術を検討する。

水疱性角膜症

内皮機能不全により実質浮腫と上皮下水疱を生じた状態。霧視と、水疱破裂による強い疼痛が問題となる。診断は所見で明らかだが、原因(術後・レーザー後・ヘルペス性・ジストロフィ)を特定することが治療方針に影響する。

  • 保存的治療:高張食塩水点眼・眼軟膏、治療用ソフトコンタクトレンズ(疼痛緩和)、眼圧下降(高眼圧は浮腫を悪化させる)。
  • 根治的治療内皮移植(DSAEK / DMEK)。視力予後が期待できない眼では、疼痛緩和を目的とした処置(羊膜被覆、Gundersen 結膜弁など)が選ばれる。
  • 培養角膜内皮細胞の前房内注入など、ドナー角膜に依存しない治療の実用化も進んでいる。

実務で押さえること

  1. 内皮数は「手術前に測る」。特に緑内障手術眼、レーザー虹彩切開後、外傷歴、ヘルペス既往、Fuchs 家系では必須。
  2. 数値が低い症例では術式と説明を変える。同じ白内障手術でも、内皮保護の手技と「術後に角膜がむくむ可能性」の説明が必要になる。
  3. 片眼性の内皮炎(CMV・HSV)を見逃さない。眼圧上昇+コイン状角膜後面沈着物は前房水 PCR の適応を考える。

関連リンク


主な参考:日本角膜学会の角膜内皮障害・水疱性角膜症に関する総説/培養ヒト角膜内皮細胞注入療法の臨床報告/EyeWiki "Fuchs Endothelial Corneal Dystrophy"・"Bullous Keratopathy"。細胞密度の基準値は機器・年齢により幅があるため、各施設の基準を確認されたい。

この記事は AI(手動(Claude+収集記事))が作成した解説です。 正確性を保証するものではありません。診療上の判断は必ず一次情報・成書をご確認ください。 (2026-07-23 作成)