オリジナル解説 / 網膜硝子体

糖尿病網膜症の病期分類と治療

概要

糖尿病網膜症は、慢性の高血糖により網膜血管が障害される合併症で、成人の視覚障害の主要原因の一つである。初期は自覚症状に乏しく、進行してから受診すると治療が難しくなるため、無症状の段階からの定期的な眼底評価と、血糖・血圧の全身管理が予後を左右する。

毛細血管瘤・出血 軟性白斑 新生血管 黄斑
図1. 糖尿病網膜症の代表的な眼底所見(模式図)。毛細血管瘤・網膜内出血(点)、軟性白斑(虚血のサイン)、増殖期にみられる新生血管(乳頭部のもつれた血管)。

病期分類

日本では 国際重症度分類(ICDR)・改変 Davis 分類・新福田分類が併用される。国際重症度分類は眼底所見のみで「網膜症なし/非増殖(NPDR)/増殖(PDR)」に大別し、NPDR を軽症・中等症・重症に分ける。

国際重症度分類 改変 Davis 分類 代表所見
軽症 NPDR 単純網膜症 毛細血管瘤のみ
中等症 NPDR 単純網膜症 出血・硬性白斑・少数の軟性白斑
重症 NPDR 増殖前網膜症 4-2-1 ルール(下記)
増殖網膜症(PDR) 増殖網膜症 新生血管、硝子体/網膜前出血

重症 NPDR の 4-2-1 ルール:①4 象限すべてで 20 個以上の網膜内出血、②2 象限以上で明瞭な静脈数珠状拡張、③1 象限以上で明確な網膜内細小血管異常(IRMA)——のいずれかを満たし、増殖所見がないもの。※分類の対応はあくまで「目安」で厳密な 1 対 1 ではない。

糖尿病黄斑浮腫(DME)

DME は病期と独立に、どの段階でも生じうる視力低下の主因である。中心窩を含むか(CI-DME)が治療方針を分ける鍵で、医師の主観ではなく OCT の中心網膜厚(通常 300µm 以上)で客観的に診断する。

検査

  • 散瞳眼底検査:網膜症の程度・光凝固の適否を評価。超広角撮影は周辺部の把握に有用。
  • OCT:黄斑浮腫の定量・経過観察、硝子体牽引の評価。ただし網膜厚は必ずしも視力と相関しない。
  • 蛍光眼底造影(FA):無灌流領域の検出、IRMA と新生血管の鑑別(NPDR と PDR の区別)に有用。

治療

  • 全身管理:血糖(HbA1c)・血圧・脂質の管理がすべての基盤。長期不良例の急速な血糖改善は網膜症を一過性に悪化させうるため緩徐に。
  • 汎網膜光凝固(PRP):ハイリスク PDR には可及的速やかに施行。日本では重症 NPDR で無灌流領域を認めれば早期に光凝固し、PDR への進行を予防する姿勢が特徴。
  • 抗 VEGF 療法CI-DME の第一選択(Protocol T では視力低下が中等度以上でアフリベルセプトが優位)。PDR にも用いられる。
  • ステロイド(トリアムシノロン):抗 VEGF 不応の DME などで。眼圧上昇・白内障に注意。
  • 硝子体手術:牽引性網膜剝離、遷延・反復する硝子体出血などに適応。

抗 VEGF と汎網膜光凝固(PDR)

DRCR.net の Protocol S では、PDR に対する抗 VEGF は 2 年の視力で PRP に非劣性で、周辺視野障害が少なく硝子体手術も少なかった(5 年では視力は同等)。ただし抗 VEGF は頻回通院を要し、通院中断時に硝子体出血・牽引性剝離などで重篤化するリスクがあるため、アドヒアランスを適応判断に含める。

まとめ

糖尿病網膜症は無症状期からの管理が予後を決める。病期(4-2-1 ルールを含む)と DME(CI-DME か)を評価し、全身管理を基盤に、光凝固・抗 VEGF・ステロイド・硝子体手術を適切に組み合わせる。


主な参考:糖尿病網膜症診療ガイドライン第 1 版(日本糖尿病眼学会, 日眼会誌 2020)/国際重症度分類(Wilkinson・Ferris, 2003)/DRCR.net Protocol S・Protocol T/EyeWiki "Diabetic Retinopathy"。分類の対応や試験の数値は原著・ガイドラインで確認されたい。

この記事は AI(手動(Claude+Web調査))が作成した解説です。 正確性を保証するものではありません。診療上の判断は必ず一次情報・成書をご確認ください。 (2026-07-14 作成)